古いネットの知り合いからお叱りを受けてしまいました。何せ、An Outcast of the Islandsのレビューを書くといったのが4月のことですから、早半年。ごもっともというところでしょう。
実はレビューの下原稿というかメモは昨年末に作成済でして、ブラッシュ・アップのために、Joseph Conradの同名小説を読んでみたり、Wojciech Karolakについて調べてみたりと、それなりに作業は続けていたところです。その辺りのことについては、「その1」、「その2」で中間報告してきたのでご承知かと思います。
うーん、でもやはり断念。去年のメモ(最終保存日は2023年12月18日とあります。)をそのまま掲載しますので、あとは読者の皆様の方で、「その1」、「その2」と合わせて脳内補正していただければ幸いです。
アルバム「An Outcast of the Islands」について Memo
■アルバムの性格
- 小説の純然たるコンセプト・アルバムではない
- 種明かし/CDのColin Bassによる解説
- 小説+80年代の体験+90年代の体験→自身の体験に一部小説の中で印象的な部分を重ね合わせてできたよう
- Poznanでの録音ということで、ポーランドのミュージシャンが多数参加
■各曲について
1. Macassar
- ガムランらしき音で始まり、スタートはエスニックな雰囲気を漂わせるが、直ぐに馴染みのあるアップ・テンポなロック・インストに移行する。非常に出来が良い曲だ。というか、モロにCamel。それもそのはず、ギターはAndrew Latimer,ドラムにDave Stewartで、Colin Bassと合わせて当時のCamel三役揃い踏み状態。さらには脇をQuidamのメンツらが固めている。
- のびやかなギターに煽情的なキーボード
- 注目は、ゲスト参加のWojciech Karolak。ポーリッシュ・ジャズ界を代表するオルガン奏者らしい
- マカッサル、Wikipediaによると、インドネシアのスラウェシ島南部に位置する南スラウェシ州の州都で、古くからインドネシア東部を代表する貿易の中心地だったとのこと。観光地としても名高い。
- 小説冒頭は、主人公ウィレムスがマカッサルの貿易会社で使い込みをしたのが発覚する場面から始まる。育ての親であるリンガード船長を頼り、家族を捨てて、ボルネオ島のとある川沿いの集落に身を隠すこととなる。頭は良いがうぬほれが強くてどうしようもなく嫌なヤツとして描かれている。
- スリリングな曲だけど、そんな破滅的な状況とは思えない。小説の影響もあるのだろうけど、Colinにとってインドネシアへの旅の入口というイメージなのだろうと想像する。
2. As Far As I Can See
- 穏やかなボーカル曲が続く
- 歌詞はちょっと抽象的で僕の英語力ではニュアンスが掴めないけど
- 「私の手を取って、一緒に歩いて行こう。僕は毎日君の隣にいるよ。」と歌ってはいるけど、少しすれ違う男女の仲を予感させるようにも思える。
- ここでもAndrew Latimerの素晴らしいギターを聴くことができる。
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3. First Quartet
- 一転して、物悲しい弦楽四重奏曲。このタイプの曲が全部で3曲あり、アルバム上の大きな場面転換に配置されている。
- ブックレットに、All titles composed by Colin Bassとあるので、これもColinの作曲。多彩な人だ。
- 演奏は、Members of the Poznan Philharmonic Orchestraとある。
- アレンジは、Kim Burtonとあるが、恐らく、3 Mustaphas 3でKemo Mustaphaと名乗っていたジャズ・ピアニスト。 Working Week
4. Goodbye To Albion
- 再びボーカル曲
- 手持ちの辞書を引くと、AlbionとはBritainまたはEnglandの古名とある。
- 80年代にイギリスを離れベルリンへ移住した際の思い出話なのか、歌詞は悲しい別れの曲だが、メロディーには新天地へ馳せる希望も感じさせる。素敵な曲。
- Jacek Zasada (Quidam)のフルートの間奏が印象的
- Colin Bassの実録とは違って、舞台はドイツではなくインドネシアへ移る。
5. The Straits of Malacca
- バンドスタイルのインスト曲。Macassarの旋律を踏襲する形で始まるが、こちらはエッジの効いたダークな雰囲気のギターで始まる。
- マラッカ海峡は、マレー半島とスマトラ島(インドネシア)を隔てる海峡で、古くから海上交通の要衝であった。ちなみに、マングローブの海岸は、この地の海賊の格好の隠れ家となっていたという。
6. Aissa
- Colin Bassのフレットレス・ベースが主旋律を奏でる物悲しいインスト曲
- Aissaは、小説「An Outcast of Island」の主要人物。主人公のWillemsが思いを寄せた美しい女性で、海賊の元主領Omarの娘。小説ではWillemsとの愛は破滅的な結末で終わる。
- Colinがソロをとったということは、思い入れのある作中人物なのだろうと想像する。
7. Denpasar Moon
- フィリピンの女性歌手Maribethが歌い大ヒットした悲恋を歌ったボーカル曲。
- ダンドゥット調でエスニック感バッチリだがモダンで臭くない。西洋ポップスとの絶妙なハイブリッド感がたまらない。
- デンパサールはインドネシアのバリ島南部の都市でバリ州の州都
- 作曲は3 Mustaphas 3のSabah Habas Mustaphaとあるが、ご存知のとおりColin Bassがワールド・ミュージックの分野で活動する際の別名
- 東南アジアで大ヒットし、様々な歌手によりカヴァーされ矢切の渡し状態(例え古すぎ !)だったが、当時は著作権にルーズだったためColinには全く還元されなかったらしい。
- ちなみにインドネシアのミュージシャンと交流を続けており、本格的なバンド活動やプロデュースを長く続けている。
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8. Second Quartet
- 再び、物悲しい弦楽四重奏曲。31秒と短いが、すぐに次曲へと続く
9. No Way Back
- 印象的なギターのイントロから始まるボーカル曲
- もう戻る道は無いと悲嘆に暮れる歌詞世界
- 不安を煽るような中間部のベース・ソロも良い
10. Holding Out My Hand
- 悲しげなボーカル曲
- 手を差し伸べるがすれ違う二人 破滅へと向かう彼(?)
- キーボードのリフ
- 終盤のエモーショナルなよく泣くギターも良い
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11. The Outcast
- 雷鳴が轟き始まる
- どこか達観したような諦めと寂しさが漂う弦楽四重奏曲
12. Burning Bridges
- 小説で描かれた悲劇の結末を予感させるようなイントロで始まるボーカル曲
- 自身の選択で破滅へと進む自分の姿
13. Reap What You Sow
- 一転して、希望に満ちたボーカル曲。ブックレットの解説にもあるように、小説とは異なる希望に満ちたエンディング
- 過ちを認め、もう大丈夫というために、君に会いに行く
- コーラス部が良い 励まされる感じ
14. Trying To Get To You
- 虫の声ではじまり終わる
- 自身でアコギを弾いている シンプルなボーカル曲でおわる
読み返して見ると、最初は色々書いてたのに徐々に単語の羅列になってきてますね。行き詰まってたことを思い出しましました。